旅する服


探していた服が戻ってきた。 祖母の形見のジャケットとセーターは長い旅をしていた。 探しても見つからないはずだ。
もどってきたジャケットに袖を通してみると、自分のなかに祖母を発見した。 祖母がオーダーメイドで作ったジャケットを着るとぴったりと身体になじむ。手は私のほうが長いが着れないほどではない。 わたしは祖母のシンプルな愛情が好きだった。 血縁関係のみに愛情をそそぐ女性が祖母で、母はどちらかというとリベラルな愛情を心情としていた。 子どものわたしに祖母の愛情が愛に思えた。 それは甘いお菓子のような愛で、コーセーの化粧品の匂いと肉厚でやわらかな手はなんでもうけいれていくれるような気がしていた。 母の愛を理解したのは大人になってからだ。その愛は深いのでそれが理解できるには知識を必要とした。 でも祖母の愛が世間的には主流である、誰かがお母さんの話しをしているときは何となく祖母をイメージする。
祖母と母、両方の愛情をうけてきたのだと旅をおえた服に袖を通して思った。

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